知っておきたい糖尿病の種類

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糖尿病の分類

糖尿病は、以下に挙げられているように、発症の機序(メカニズム)によって分類されている。以前は治療のやり方によって「インスリン依存型糖尿病」あるいは「インスリン非依存型糖尿病」に分類されていたことがあった。さらにそれより以前には、I型糖尿病、II型糖尿病とローマ字を使って分類されていた。しかし2010年現在ほぼ世界中すべてにおいて、以下のように病気の原因に基づく分類が用いられている。ここでは日本糖尿病学会分類基準(1999年)にしたがって分類している。

1型糖尿病[編集]

詳細は「1型糖尿病」を参照

1型糖尿病(いちがたとうにょうびょう、ICD-10:E10)は、膵臓のランゲルハンス島でインスリンを分泌しているβ細胞が死滅する病気である。その原因は主に自分の免疫細胞が自らの膵臓を攻撃するためと考えられているが(自己免疫性)、まれに自己免疫反応の証拠のない1型糖尿病もみられる(特発性)。

一般的に患者の多くは10代でこれを発症する。血糖を下げるホルモンであるインスリンの分泌が極度に低下するかほとんど分泌されなくなるため、血中の糖が異常に増加し糖尿病性ケトアシドーシスを起こす危険性が高い。そのためインスリン注射などの強力な治療を常に必要とすることがほとんどである。

2型糖尿病[編集]

詳細は「2型糖尿病」を参照

2型糖尿病(にがたとうにょうびょう、ICD-10:E11)は、インスリン分泌低下と感受性低下の二つを原因とする糖尿病である。欧米では感受性低下(インスリン抵抗性が高い状態)のほうが原因として強い影響をしめすが、日本では膵臓のインスリン分泌能低下も重要な原因である。少なくとも初期には、前者では太った糖尿病、後者ではやせた糖尿病となる。遺伝的因子と生活習慣がからみあって発症する生活習慣病で、日本では糖尿病全体の9割を占める。

慢性膵炎[13] や膵炎の悪性腫瘍などの膵臓疾患によらず2型糖尿病が発症する原因は完全に明らかではないが、大筋を言うと、遺伝的に糖尿病になりやすい体質(遺伝因子)の人が、糖尿病になりやすいような生活習慣を送ること(環境因子)によって2型糖尿病になると考えられている。原因を遺伝と環境に分割したときに遺伝で説明できる割合(遺伝率)は、異なる研究で25%から80%と様々な値が推定されている[14]。特に高い推定値は追跡調査期間が長い研究で得られている[14]。遺伝的な原因としては、KCNQ2[15][16]、PPARG、KCNJ11、TCF2L7[17][18][19] などとい った遺伝子上の配列の違いによって、同じような生活習慣を送っていても、ある人は糖尿病が起こりやすく、別の人は起こりにくくなるという違いがあることがわかってきている。また、日本で欧米と比較して多く見られるインスリン分泌能低下を主要因とするやせ型糖尿病の原因遺伝子としてKCNJ15が挙げられていて、日本人において発見されたこの遺伝子上の危険因子となる配列は欧米人にはきわめてまれであると報告されている[20]。

慢性に高血糖が持続すると膵β細胞機能が障害されると共に、過剰な血糖をグリコーゲンに転換して蓄える筋肉や肝臓、脂肪に転換して蓄える脂肪組織においてもインスリン抵抗性が生じて更なる高血糖をもたらし、これがインスリン分泌不全、インスリン抵抗性を更に増悪させ、糖尿病状態を一層悪化させる状態が糖毒性として取り上げられている[21]。インスリン抵抗性などによって生じた高血糖状態は、膵β細胞内において、大量の活性酸素種の生成やタンパク質とグルコースとの糖化反応を引き起こす。一般に糖毒性と呼ばれるこの現象は、β細胞のインスリン含量の減少やβ細胞数の減少を引き起こすと考えられる[22]。

さらに血中遊離脂肪酸の上昇がみられる肥満では肥大した脂肪細胞から種々のサイトカインや脂肪酸が分泌され、遊離脂肪酸が膵β細胞機能を障害すると共に、インスリン抵抗性が増強される状態が脂肪毒性として取り上げられている[21]。

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主な症状

通常糖尿病患者は自覚症状はないと考えることが多い。下記に列挙するような手足のしびれや便秘などが実はあるのだが、特別な症状と考えていないことがある。血糖値がかなり高くなってくると、口渇・多飲・多尿という明白な典型的症状が生じる。これらは血糖値が高いということをそのまま反映した症状なので、治療により血糖値が低下するとこれらの症状は収まる。血糖値がさらに高くなると、重篤な糖尿病性昏睡に陥り、意識障害、腹痛などをきたすこともある。いっぽう発症初期の血糖高値のみでこむら返りなどの特異的な神経障害がおこることがある。また発症初期に急激に血糖値が上昇した場合、体重が減少することが多い(血液中に糖分が多い一方、脂肪細胞などは糖分が枯渇した状態になるためである)。

その他の症状は、たいてい糖尿病慢性期合併症にもとづくものである。

余命への影響[編集]

1971年から1980年のデータで糖尿病患者と日本人一般の平均寿命を比べると男性で約10年、女性では約15年の寿命の短縮が認められた[27][28]。このメカニズムとして高血糖が生体のタンパク質を非酵素的に糖化させ、タンパク質本来の機能を損うことによって障害が発生する。この糖化による影響は、例えば血管の主要構成成分であるコラーゲンや水晶体蛋白クリスタリンなど寿命の長いタンパク質ほど大きな影響を受ける。例えば白内障は老化によって引き起こされるが、血糖が高い状況ではこの老化現象がより高度に進行することになる[27]。同様のメカニズムにより動脈硬化や微小血管障害も進行する。また、糖化反応により生じたフリーラジカル等により酸化ストレスも増大させる[29]。

日本において1991年から2000年までの10年間の18,385症例を分析した結果からは、死因第1位は悪性新生物 34.1%(うち肝臓癌 8.6%)、第2位は血管障害(糖尿病性腎症,虚血性心疾患,脳血管障害) 26.8%、第3位は感染症 14.3%、糖尿病性昏睡 1.2%と報告されている[30]。また、血糖コントロールの良否が死亡時年齢に影響を与え、男性で2.5歳、女性で1.6歳短命であった[30]。更に、糖尿病患者の平均死亡時年齢は、男性68.0歳、女性71.6歳で同時代の日本人一般の平均寿命に対し、男性9.6歳、女性13.0歳短命であった[30]。

糖尿病合併症[編集]

詳細は「糖尿病慢性期合併症」を参照 第1指付け根に生じた潰瘍。

糖尿病合併症は3つの合併症(糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症)が特徴的であり、総称して細小血管障害と呼ばれる。また、高血糖を引き起こす急性合併症としては、糖尿病性ケトアシドーシス及び高浸透圧高血糖症候群がある。

糖尿病性神経障害3つの合併症の中で最初に出現することが多く、末梢神経障害による手足先端のしびれや感覚の低下、自律神経障害による便秘・立ちくらみ(起立性低血圧)・勃起不全などを引き起こす。また、温痛覚が鈍り他の疾患の自覚症状に乏しくなることがある。臨床的には心筋梗塞の胸痛、重症虫垂炎の腹膜刺激症状、低温やけどなどが重要である。糖尿病性網膜症発症すると、硝子体や網膜の出血が起きるようになり、繰り返すごとに視力が低下する。生命を脅かすことはないが、QOLの観点から重要な合併症である。また突然の失明の危険性から激しい運動療法が禁忌になるため、治療自体の妨げにもなる[31]。糖尿病性腎症3つの合併症の中で最も晩期に出現するが、最終的な寿命に大きな影響を与える合併症である。最初はごく微量のアルブミン尿のみだが、次第に明らかな尿蛋白や浮腫(むくみ)が出現し、最終的には腎不全となって血液透析が必要になる。

心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症、脳梗塞といった血管系疾患のリスクが上がるのも重大で、細小血管障害と対比して大血管障害と呼ばれる。

他にも脂肪肝[32]、皮膚症状(糖尿病性リポイド類壊死)、創傷治癒能力の低下、易感染性(終末像は敗血症)などの症状が起こりやすい[31][33]。

アルツハイマー型認知症[編集]

糖尿病はアルツハイマー型認知症のリスク要因となっている[33]。インスリンの分泌を増やす糖質中心の食習慣、運動不足、内臓脂肪過多がアルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドベータの分解を妨げているとしている。アミロイドベータも分解する能力のあるインスリン分解酵素が糖質中心の食生活習慣によって血中のインスリンに集中的に作用するため、脳でのインスリン分解酵素の濃度が低下し、アミロイドベータの分解に手が回らずに蓄積されてしまうとしている。

悪性腫瘍[編集]

1998年の久山町の調査では、糖尿病は悪性腫瘍死の発生のリスクを有意に増大させ、高血糖の程度を示すヘモグロビンA1cの高値の者ほど胃がんの発生率が高かった。糖尿病及び高血糖は悪性腫瘍の重要な危険因子である[33]。糖尿病と診断されたことのある人はない人に比べ20-30%ほど、後にがんになりやすくなる傾向があり、男性では肝がん]、腎臓がん、膵がん、結腸がん、胃がん、女性では胃がん、肝がん]、卵巣がんでこの傾向が強かった[34]。C-ペプチドは、インスリン生成の際、インスリンの前駆体であるプロインスリンから切り放された部分を指すが、男性では、C-ペプチド値が高いと大腸癌リスクが高くなる。C-ペプチドは男性の結腸癌と関連がある[35]。血糖コントロール悪化で入院した糖尿病患者の6.85%に新規に悪性腫瘍が指摘され、一般人口の罹患率より高いと考えられる。[36]

著者
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宮澤孝慈

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